新百合ヶ丘総合病院 産婦人科 リプロダクションセンター

当院の技術

当院独自の技術

以下は、当院で考案された独自の方法です
1. FF-ICSI(Follicle Fluid Activation ICSI
2. No Wash Medium Change
3. ZP開口型ICSI

1. FF-ICSI(Follicle Fluid Activation ICSI)

自然の受精では精子が膣に射精された後、子宮から卵管を遡上し卵子細胞内に辿り着くまでの間に、精子は多くの変化をしながら卵子に到達します。これを「精子の受精能獲得」と言い、精子が卵子に受精するために必要な能力を獲得する大切な変化です。この受精能獲得が起きない精子は、卵子に受精する事が出来ません。

ところが、顕微授精の際には、これらの変化を要することなく受精が進行します。つまり、顕微授精に使用される精子は、受精能を獲得することなく卵子の細胞内に入ることになります。当院ではここに着目し、受精が起きるからOKではなく、たとえ顕微授精であっても、精子をなるべく自然に近い形に近付けてから受精をさせるべきではないだろうか?と考えました。

そこで、受精能を人工的に獲得させるべく精子を卵胞液へ暴露させ、卵管での精子の変化を人工的に再現してから顕微授精を行う「FF-ICSI」を考案し、施行しています。当院で顕微授精を行う全ての患者さんがこの方法の対象になりますが、子宮内膜症を有する患者さん、抗精子抗体を持つ患者さん、精子が非常に少ない患者さん、精子に粘張性が強く顕微授精が困難になる患者さんは、この方法の対象から除外されます。

当院の検討の結果では、FF-ICSIを施行した場合、胚盤胞到達率は有意に上昇し、受精率や胚の質が改善される傾向があるという結果が出ています。FF-ICSIは、日本生殖医学会、日本受精着床学会、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)などで発表を行っています。

2. No Wash Medium Change

従来、胚の培養液には大きく分けて3種類の培養液が使用されていました。1つは受精用の培養液、1つは初期胚培養用の培養液、1つは胚盤胞培養用の培養液です。なぜ培養液が3種類かというと、受精の時の卵管液、初期胚の時の卵管液、胚盤胞の時の子宮内腔液は、それぞれ分泌液の組成が違っていて、体内では胚の要求する栄養素の分泌液に変化するためです。これを基にして3種類の培養液が開発された経緯がありました。そして培養液交換時には、よく胚を洗浄し、前液を持ち込まないように次の培養液の入った培地に胚を移すのが当たり前でした。しかし、この方法には胚をよく洗えて前液の持ち込みが少なくなるというメリットと反して、胚を入念に洗うことにより胚に物理的な刺激が加わる事、洗浄時に培養液のPHが大きく変化し胚にとってストレスとなる事、洗浄に時間がかかり長時間顕微鏡の光に曝される事、技術的に成熟していない培養士の培養液交換によって胚が失われるリスクがある事、などの多くのデメリットを抱えていました。

2010年頃から、培養液交換がなく1種類の培養液のみで培養を行う、1Step Mediumという培養液が日本の学会で成績が報告され始め、多くの関心を生みました。この方法では、培養液の交換を行わないで受精から移植までが可能とされていて、成績は3種類の培養液を用いた場合と比較して、全く遜色がありませんでした。しかし、卵管や子宮で起きている、胚の発育段階に合わせた分泌液の組成の変化とは根本が異なることになり、これらは遺伝子発現などに影響を与えるのではないか?と指摘する海外の論文も幾つか発表されました。

そこで当院では、1Step Mediumの持つ、洗浄しないことによって胚へのストレスを低減するというメリットと、3種類の培養液を用いる方法の持つ、卵管や子宮の組成の変化に近いというメリットを合体させ、3種類の培養液を用いて洗浄を行わない「No Wash Medium Change」を考案し、全症例に施行しています。

当院の検討の結果では、No Wash Medium Changeを施行した場合、胚盤胞到達率は有意に上昇し、胚の質が改善される傾向があるという結果が出ています。No Wash Medium Changeは、日本生殖医学会で発表を行っております。

3. ZP開口型ICSI

顕微授精をしていると、どんなに丁寧に手技を行っても、多くの卵子が穿刺後に変性してしまう症例に遭遇します。これらの理由は様々ですが、主には、卵子を覆う透明帯が硬い場合に、透明帯にICSIの針を貫通させる際の強い衝撃が卵子に伝わり変性してしまう場合や、卵子細胞膜そのものが非常に弱い場合などが原因として挙げられます。

そこで当院ではこれらの問題を解消すべく、透明帯を貫通させる際に衝撃をなるべく卵子に伝えないZP開口型ICSIを考案し、顕微授精後の卵子変性が多い症例や透明帯が固い症例などに施行しています。

当院の検討の結果では、ZP開口型ICSIを施行した場合、顕微授精後の卵子の変性率が低くなる傾向があるという結果が出ています。ZP開口型ICSIは、日本生殖医学会で発表を行っています。