抄読会コラム

「精子の質は冬の方が良くなる?」|リプロダクションセンター

リプロダクションセンター胚培養士 神野亜耶

掲載日:2024年10月21日

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  • リプロダクションセンターでは、医師や胚培養士が定期的に集まって抄読会(※)を行っています。

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    今回はその内容を一部ご紹介します。

    ※抄読会とは学術論文を読み、その内容を共有・議論することで、最新の研究成果などを皆で理解するための取り組みです。当院では開院当初から毎月欠かさず行っています。

精子の質について

精子の質といっても、精子の数、運動率、生存率、形の綺麗さ…評価するポイントは様々です。なかでも精子の数と運動率の値が低いと、体外受精(ふりかけ法)では受精卵を作ることが難しくなり、顕微授精の適応になることがあります。

夏と冬でどう変わるのか

20年間にも亘る研究で、精液検査を行った季節と検査値を比べた結果、精子濃度・総精子数・総運動精子数の値が夏に最も低くなり、冬に最も高くなることが示されました。その理由の一つには、気温と湿度が高まると、精巣の温度調節機能が弱まり、その結果、精子の生産が低下すると報告されました。(参考:Hum Reprod Sci 2023;16:185‑94)

妊娠率への影響はない

現時点では、体外受精の妊娠率と季節において、明らかな関係性は認められていません。

まとめ

精子にとって高温多湿な環境は良くないことがこれまでにも多く報告されていますが、今回紹介した内容でも同様な結果が得られています。体外受精において精子の質がすべてではありませんが、特に夏場は精巣が高温多湿にならないよう気を付けることが大切です。