体外受精とは
- 体外受精とは
- 胚培養士からのメッセージ
- 体外受精の対象者
- 体外受精のながれ
- 顕微授精について
- 胚盤胞移植法
- 胚凍結と融解胚移植
- 凍結胚の更新手続きについて
- 全胚凍結法
- Artificial Shrinkage 法について
- 二段階移植とSEET法
体外受精とは
体外受精とは正式には体外受精-胚移植(in vitro fertilization-embryo transfer:IVF-ET)と呼ばれ、卵子を卵巣から直接採取して体外で精子とかけ合わせ、得られた受精卵を母親の子宮内に戻して妊娠を成立させる治療法です。
2022年には約54万周期の治療が行われ、約8万人の赤ちゃんが誕生しています。赤ちゃんの実に10人に1人が体外受精による赤ちゃんとなっており、日常的に広く定着した治療法であると言えます。
体外受精は1978年にイギリスのグループが最初に成功して以来(2010年ノーベル医学生理学賞受賞)、瞬く間にその技術が世界中に広まり、現在では顕微授精・透明帯開孔法や胚盤胞移植法など様々な関連技術の進歩もみられ、安定して行うことが可能な状況にあります。また生殖に関わるこれらの治療法を総称して生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology:ART)、もしくは高度生殖医療と呼んでいます。

不妊治療
体外受精に先立って、まず不妊原因の検索・治療が行われます。薬物による治療、腹腔鏡・子宮鏡・卵管鏡などの手術療法、人工授精など様々な方法で原因の除去に努め、極力自然に近い形での妊娠を目指すわけですが、それでも妊娠に至らない場合が体外受精の適応となります。
不妊症の中で、一般不妊治療で妊娠する人の割合は約50%と言われており、そのほとんどが治療2年以内(70%以上が1年以内)で妊娠しています。従って、一般不妊治療を2年間続けても妊娠しない場合には体外受精を考慮すべきであると思われます。
ただし年齢が高くなれば卵の質が悪くなったり、排卵誘発を行っても卵がなかなか発育しないなどの理由で妊娠率が低下してくるため、35歳以上では1年間の一般不妊治療で妊娠に至らない場合には、早めの体外受精を考慮します。
体外受精のメリット
体外受精のメリットは妊娠率が高いだけでなく、不妊の本当の原因が明らかになることとも言えます。通常の不妊症検査で異常が見つからなかったご夫婦でも、体外受精を行ってみると、それまで判らなかった卵の質、精子の受精能力、子宮の着床環境などについて問題があるのが明らかになることが少なくありません。
体外受精で妊娠される方のうち、その多くが3回の胚移植までに妊娠します。初回の体外受精で妊娠できなくても、その原因を診断し次回の方法を考えます。通常の体外受精法は卵巣刺激を毎月行うことはできませんので、3回採卵を行うには約1年かかります。
ただし年齢の高い方や若くても卵巣機能が悪い方は、1回の採卵で取れる卵の数が少なく生理周期による卵の質の差も大きいので、通常よりも多くの回数の採卵を行う必要があります。そのような方も卵巣刺激方法を工夫して、休む期間を短くする(毎月・隔月採卵を行う)ことで同様に約1年を目途に治療をすすめます。
ご夫婦に適した方法を
最終的に妊娠を諦めなければならないご夫婦の多くは、妻の年齢、卵巣機能の低下、子宮内膜症の進行例などで卵の質が極端に悪い例、また精巣(睾丸)にも全く精子のいない無精子症や精子の遺伝子に問題のある例です。胚移植を計5回行っても結果が出なかった時には、今後の治療の継続についてよく相談させていただくようにしています。
当院では治療に精通した医師が卵巣刺激・採卵手術・胚移植を行います。また、現時点で考えられる最高の培養環境を整えており、熟練した胚培養士が的確な精子調整・卵子および胚操作を行います。
長い間妊娠しなかったご夫婦では、真の不妊原因が複数あることが少なくなく、根気のいる治療となってしまうこともありますが、同じ方法をただ繰り返す体外受精でなく、ご夫婦に適した方法を選んで全力で取り組んでまいります。
体外受精の可能な回数・年齢・限界
基本的に回数に制限はありません。年齢に関係なく良質な卵が発育する限り可能です。ちなみに、私達が体外受精を行い妊娠・出産までされた方の採卵時の最高年齢は46歳です。採卵回数では最高12回で妊娠・分娩された方がおられます。
しかし新鮮胚移植不成功にてその後採卵を3回以上続けてもまったく胚盤胞に発達せず凍結保存できない場合や、胚移植を計5回行っても臨床的妊娠に至らない場合には挙児の可能性が極めて低くなるため、治療の継続につきまして相談をさせていただいております。
(現在当院の治療可能な年齢は45歳未満とさせていただいております。)
カウンセリングの利用について
治療を進めるに従い、治療に対する疑問がおこったり、周囲の人たちや夫婦間で互いを理解したり、自分の気持ちを整理しなければならないときがやってくるかもしれません。当院ではこのようなときに、ご希望に応じてリプロダクション専属看護師(不妊症認定看護師)によりカウンセリングをさせて頂きますので、お申し出下さい。平日の午後にカウンセリング外来を設けております(有料となります)。ご夫婦の双方が自由意志により同意していることを確認するために、ご夫婦そろってのカウンセリングばかりでなく、夫のみ、妻のみでお話させて頂くことも可能です。
この治療につきましては、この説明書をよく読み、体外受精-胚移植に対して十分理解をし、かつ同意の得られたご夫婦に対してのみ実施いたします。ご夫婦のどちらか一方の同意が得られない場合は実施いたしません。また同意を得られた後でも、ご夫婦が希望すれば他の治療への切り替えは自由です。