抄読会コラム
「不妊治療における超音波ドップラー検査」|リプロダクションセンター産婦人科 医長 山口摩佑子
掲載日:2025年11月5日
リプロ外来では卵巣や子宮内膜の状態把握のために超音波検査を施行しておりますが、多くは厚みや大きさなどを測定しています。超音波には血流を評価できるドップラー検査の機能もついており、不妊治療における妊娠率と血流との関連が多く研究されているため、それらをまとめた論文を紹介します。
方法
卵巣血流・子宮血流・子宮内膜血流について、不妊治療における妊娠成功率との関連を調査した論文です。
結果
① 卵巣血流
- 自然周期の胚移植では、成熟卵胞の75%以上が血流に囲まれている場合は妊娠率が上昇する
- 人工授精では、卵巣の血管抵抗が低い周期の方が妊娠率が高い
② 子宮血流
- 子宮の動脈の血管抵抗が低い方が妊娠率が上昇する
③ 子宮内膜血流
- 子宮内膜の血流が広範囲に豊富に認められる方が妊娠率が高い
考察
このように、不妊治療において超音波での血流評価は妊娠予後予測に有用であるという報告は、多数あります。
しかし血流の測定は時間がかかり、測定の難易度も高く医師間での測定差も大きいため、多くは研究用途に留まっています。実際に臨床応用されるには更なる報告の蓄積が待たれるところです。
【参考】
Yae Ji Choi, MD, Hyun Kyoung Lee, MD, Seul Ki Kim, MD, : Doppler ultrasound investigation of female infertility, Obstet Gynecol Sci 2023 ;66(2): 58-68
Yae Ji Choi, MD, Hyun Kyoung Lee, MD, Seul Ki Kim, MD, : Doppler ultrasound investigation of female infertility, Obstet Gynecol Sci 2023 ;66(2): 58-68