ドクターコラム
「超音波下卵管造影検査とは」|リプロダクションセンター産婦人科 医長 安藤 まり
掲載日:2024年11月30日
今回は不妊検査の一つである超音波下卵管造影検査についてお話ししたいと思います。
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子宮卵管造影検査(HSG:hysterosalpingography)は、子宮口から造影剤を流し、レントゲン検査を用いて、子宮の形の異常や卵管の異常の有無を確認する方法として、昔から一般的に行われている検査です。また診断の目的以外にも卵管の通りを良くするという効果もあるため、検査後の卵管の疎通性や妊娠率を高める効果もあります。不妊治療を考えている患者さんには、まず受けてほしい検査の一つです。
子宮卵管造影検査と超音波下卵管造影検査
HSGは精度も高く、妊娠率向上といったメリットも高い検査ですが、一方で、疼痛や造影剤によるアレルギーのリスクがあり、さらに放射線被曝の問題もあります。また、検査には2日間を要する場合もあり、造影剤にヨウ素が含まれているため甲状腺疾患患者さんに使用しづらいといった問題があります。
当院で導入している超音波下卵管造影検査は、HSGとは異なる造影剤であるヒドロキシエチルセルロースを使用し、超音波下で検査を行う方法です。ヒドロキシエチルセルロースはセルロース由来の無毒な化合物で、食品や医薬品の添加剤としても利用されているため、安全性が高くアレルギーの報告も少ないのが特徴です。また、自然に体内で吸収されるため体への負担も少なく、放射線被曝がないという大きなメリットがあります。
オランダ行われたHSG検査と超音波下卵管造影検査を比較した研究では、超音波下卵管造影検査では痛みが少なく、妊娠率も同等であったという報告もあります。
検査自体に痛みがないわけではありませんが、検査時間も短時間で済みますし、疼痛があった際は速やかに検査を終了できることもメリットの一つです。
さいごに
不妊検査・治療のために産婦人科に足を運ぶことにためらいを感じる方も少なくないと思います。しかし、妊娠・出産はご夫婦やパートナーの協力があってこそ成り立つものです。一人で悩まず、まずは気楽に相談に来ていただければと思います。少しでも検査や治療が受けやすくなるよう、当院も皆さんのサポートに努めてまいります。