ドクターコラム

「ビタミンDと妊娠」|リプロダクションセンター

産婦人科 大久保 はる奈

掲載日:2025年1月8日

ビタミンDは、歯や骨を形成し、免疫機能を調整する役割を持つ、私たちの体に不可欠なビタミンの一つです。妊娠成立にとっても、重要なビタミンであることがわかっており、不妊治療の分野でも注目されています。

摂取目安量、血中濃度

ビタミンDは、皮膚が日光にあたると合成されますが、日光浴できる時間や地域により個人差があり、特に冬だと日光浴でビタミンDを補うのは困難と思われます。

また、食品から摂取することも可能です。成人女性であれば、一日のビタミンDの食事摂取目安量は8.5μgとされていますが1)、20代から40代女性のビタミンD平均摂取量は4.6~5.3µgであり2)、ほとんどの方が不足している状態です。

ビタミンDの血中濃度は、血清25(OH)D値として、血液検査で調べることができます。20ng/ml未満で欠乏、20~30ng/mlで不足、30ng/ml以上で充足とされています。当院でも検査していますが、サプリメントを内服されていない方は、ほぼ全員と言っていいほど欠乏域にあります。

ビタミンDを含む食材

  • ビタミンDのイメージ
  • ビタミンDを豊富に含む食材として、魚類やきのこ類が挙げられます。魚類であれば特に鮭に多く、一切れ(100g)に32μg含まれるので3)、これだけでも一日の摂取目安量を満たすことができます。きのこ類であれば、乾燥しいたけや乾燥きくらげなど、日光に当てて干したきのこの方が、生のきのこよりも10倍近い量のビタミンDを含みます。また、ビタミンDは脂溶性であり、油と一緒に摂取すると吸収率が高まるので、摂取方法も工夫すると良いでしょう。

妊娠後も重要です

ビタミンD濃度が高いほど、自然妊娠率も体外受精成績も高まると報告されています。また、妊娠した場合にも、ビタミンD欠乏と流産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病との関連性が示されており、免疫力維持のためにもビタミンDは重要です。日光浴や食生活だけでビタミンDを充足状態まで到達させるのは容易ではないので、不妊治療中の方も妊娠中の方も、ビタミンDサプリメントを是非取り入れてみて下さい。

【参考】
1)厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
2)厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告
3)文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)