ドクターコラム
「知らないうちに精子の質が低下している?」|リプロダクションセンター産婦人科 菊地 まほみ
掲載日:2025年2月4日
正常な精子の形成には適切な温度が必要で、体温よりも低い温度が最適とされています。
しかし、昨今のテレワークの普及による在宅時間の増加や、長時間座りっぱなしの生活習慣が、陰嚢の温度を上昇させ、精子の質に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
今回は、日常生活において精子の質に影響を与える要因とその対策についてお話します。
デスクワークと精子の質 
週のデスクワーク時間が勤務時間の50%以上 (17.5時間以上) の男性は、50%未満の男性と比べて精子DNA断片化率 (DNAが損傷している精子の割合) が高いといわれています。長時間座ったままの姿勢が続くと、陰嚢温度が上昇して、精子の形成に関わる精巣機能が低下するためです。
下着のタイプとの関連 
ある研究では、普段からボクサータイプの下着 (ゆったりしたタイプ) をはいていた男性は、それ以外のタイプの下着 (肌にフィットしたタイプ) をはいていた男性に比べて、精子濃度が25%、総精子運動数は17%、総運動精子数は33%高いことが明らかになっています。
肌に密着した下着では熱がこもりやすく、陰嚢温度が上昇することで精巣機能が低下すると考えられます。
肥満や精索静脈瘤の影響 
精索静脈瘤や肥満の男性は、陰嚢の平均温度が高く、精巣機能の低下につながっている可能性があります。
特にこれらの状態の男性では、日中の陰嚢温度の変動が少ないことも報告されています。一方で、健常男性は、陰嚢温度が上昇しても、こまめに体勢を変えるなどして陰嚢温度の管理ができているといわれています。
日常生活での対策
テレビ視聴やデスクワーク、車の運転など座ったままの時間が長くなる場合は、こまめに休憩を取り、立ち上がったり歩いたりすることを心がけましょう。また、男性不妊であるかどうかに関わらず、ボクサータイプの (ゆったりしたタイプ) 下着の着用がおすすめです (特に就寝時) 。
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テレワークが盛んな現代において、男性にとって陰嚢温度の管理は非常に重要です。
日々の習慣を見直し、精子の質を守るための工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか?
【参考】
Human Reproduction誌