ドクターコラム
「AMH(抗ミュラー管ホルモン)について」|リプロダクションセンター産婦人科 佐々木 恵子
掲載日:2025年2月26日
今回は、AMHについてお話したいと思います。妊娠をご希望されている方の中では、AMHという単語を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。AMHとは、卵巣の中の胞状卵胞(エコー検査で、卵巣の中に黒い丸のように見えます)の顆粒膜細胞から分泌されるものです。
そもそも卵胞とは、卵細胞とそれを取り巻く体細胞から成ります。卵胞の始まりは、原始卵胞というものです。女性は出生時に約100~200万個の原始卵胞を持っています。生殖期にはその10分の1の10~30万個になり、1か月約1000個ずつの割合で確実に減少します。
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卵子というものは、残念ながら増えることはなく、減る一方なのです。このことからわかるように、AMHという値は、年齢が上がるにつれて、基本的には減少していく値です。そのためか、AMHは、「卵巣年齢」と表現されることも時々目にします。ただ、「卵巣年齢」という表現は、少し語弊があるなと感じます。
どうしても、AMHが高いと妊娠しやすい、低いと妊娠しにくい、というイメージを持たれやすいですよね。しかしAMHという値は、高い低いで、妊娠のしやすさを測るものではありません。
卵子の質とも関係がありません。その方の、卵巣の体質、といったところだと思います。体外受精の時に採卵できる個数の予測には有用な場合が多いですが、それも個人差がありますし、AMHだけではなく、月経中の小卵胞数やFSH値、その方の卵巣の反応性など、様々なファクターがあります。確かにAMHが低い場合は、採卵数が少なくなりがちですので、根気強く採卵を繰り返す必要がある場合もあります。
AMHは卵巣の状態を把握するために有用な検査の一つではありますが、その値のみに囚われないでいただきたいな、と思います。分からないこと、ご不安なことがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
【参考】
生殖医療の必修知識 2020年度版