ドクターコラム
「子宮内膜ポリープと妊娠への影響」|リプロダクションセンター掲載日:2025年5月1日
はじめに
不妊治療を進める中で、「子宮内膜ポリープがある」と診断された方もいらっしゃるのではないでしょうか?子宮内膜ポリープは、子宮内膜にできる良性の突起状の病変ですが、妊娠に影響を与えることがあるため、治療方針を決める際に慎重な判断が必要です。
今回は、子宮内膜ポリープがどのように不妊に関係するのか、治療をすると妊娠率がどう変わるのかについて解説します。
子宮内膜ポリープとは?
子宮内膜ポリープは、子宮内膜が過剰に増殖してできる突起状の組織で、多くは良性です。
不妊に悩む方に多い?
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実は、不妊に悩む女性の約10-38%に子宮内膜ポリープが見つかると報告されています。これは、一般の女性の発生率(約10-15%)よりも高く、不妊との関連が示唆されています。
ポリープがあると妊娠に影響する理由
- 着床を妨げる可能性がある → ポリープが子宮内膜の表面を凸凹にし、受精卵がうまく着床できなくなることがあります。
- 子宮内の慢性的な炎症を引き起こす → 免疫反応が過剰になり、妊娠の成立を難しくすることがあります。
ポリープが見つかったら? ~検査と治療の流れ~
1. 検査方法
超音波検査で子宮内膜ポリープが疑われた場合、子宮鏡検査を行います。子宮鏡検査では、細いカメラを子宮内に挿入して、ポリープの有無や大きさ、場所を直接観察します。
2. ポリープの治療は必要?
ポリープのサイズや位置、症状の有無によって治療方針を決定します。
- 1cm以上のポリープは着床に影響を与えやすいため、治療を推奨します。
- 症状で小さいポリープは経過観察を選択する場合もあります。
子宮内膜ポリープの治療
子宮内膜ポリープの治療には子宮鏡手術(低侵襲婦人科手術センターへリンク)を行います。
- 手術時間:5~30分程度
- 麻酔方法:日帰り手術(局所麻酔)または1泊入院(全身麻酔)
- 入院の必要性:ポリープの大きさや数によって異なります
手術後の妊娠率は?
子宮鏡手術でポリープを切除すると、自然妊娠率が1.5~2倍に向上するという報告があります。また、体外受精を行う場合も、移植前にポリープを除去することで妊娠率が向上することが分かっています。
妊活再開のタイミング
手術後の経過が良好であれば、1回の生理を待った後から妊活や不妊治療を再開できます。
まとめ:ポリープがあっても妊娠のチャンスを増やせる!
子宮内膜ポリープは、不妊の一因となることがありますが、適切な治療を行うことで妊娠の可能性を高められます。
当院では、年間約380例の子宮鏡手術を行っており、不妊治療中の方にも安心して受けていただけるよう、子宮内膜に優しい手術を心がけています。
ポリープの治療について不安がある方は、遠慮せずに担当医に相談してくださいね。
【参考文献】
1) Hinckley MD, et al. 1000 office-Based Hysteroscopies Prior to In Vitro
Fertilization: Feasibility and Findings JSLS. 8:103-107, 2004
2) Varasteh NN, et al.: Pregnancy rates after hysteroscopic polypectomy and
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3) Bosteels J, et al.: Hysteroscopy for treating subfertility associated with
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4) Salvatore Giovanni Vitale, et al.: Endometrial polyps. An evidence-based
diagnosis and management guide. 260: 70-77, 2021