ドクターコラム

「精液検査所見は変動する!」|リプロダクションセンター

産婦人科/リプロダクションセンター 原 周一郎

掲載日:2025年5月20日

不妊症カップルの約半数は男性に原因があると言われています。男性不妊症の検査のひとつに「精液検査」があります。最も一般的で最も重要な検査になります。WHO(世界保健機関)が2021年に発表した基準値が下の図になります。

  • WHO精液検査マニュアル図 WHO精液検査マニュアル 2021年より抜粋
  • この値は、避妊中止後12か月以内に妊娠したカップルの男性の精液検査データをもとに、下位5%を「下限基準値」としたものです。あくまで下限基準値であり正常値や平均値ではありません。つまり基準値以下であっても必ずしも生殖能力がないというわけではなく、また基準値以上の精液所見に対して生殖能力を保証するものでもありません。精子の数や運動率と妊娠率には直接的な関係はありません。

また精液所見は日によって4~5倍、あるいは10倍も変化すると言われています。下図はある男性の精液所見を2週間ごとに記録してグラフにしたものです。下限以下の時もあれば、1億匹/ml以上の時もあります。

  • 精液所見グラフ図 WHO Laboratory manual 4th edition
  • 一度の検査では約半数が異常と判断されるとも言われていますので、正確な診断をするには複数回の検査がおすすめです。

    ちなみに気候や禁欲期間などでも変動しますが、精子が作られるのに2~3か月かかりますので、最近の体調には左右されません。

【引用・参考文献】
WHO精液検査マニュアル 2021年
WHO Laboratory manual 4th edition