ドクターコラム

「音楽は不妊治療の不安や痛みを和らげる」|リプロダクションセンター

産婦人科 / リプロダクションセンター 部長 田島 博人

掲載日:2025年9月10日

  • 音楽療法イメージ
  • 不妊治療は体だけでなく心にも大きな負担がかかります。採卵などの場面では痛みや不安を感じる方も多く、「少しでもリラックスできる方法はないか」と思われるのではないでしょうか。

    そこで注目されているのが「音楽療法」です。音楽を聴くことで心が落ち着き、痛みの感じ方まで和らぐという効果が報告されています。

今回ご紹介するのは、音楽療法の効果を調べた7つの臨床試験(合計793人の患者さんを対象)をまとめた研究です。
【参考】(Mahmoud MY et al:The impact of music therapy on anxiety and pregnancy rate among infertile women undergoing assisted reproductive technologies: a systematic review and meta-analysis. J Psycho. Obstet. Gynaecol. 2022 Jun;43(2):205-213.)

音楽療法がもたらす可能性

この研究によると、音楽を取り入れたグループは、そうでないグループに比べて「不安のスコア」が有意に下がっていました。つまり治療中の緊張や不安が和らいだ、ということです。また採卵などで感じる痛みも音楽を聴いたほうが軽く、治療全体への「満足度」も高くなる傾向がありました。更に気になる「妊娠率」についても、音楽療法を受けたグループの方がやや高い結果となりました。

ただし、こちらは統計的に有意差はなく、「妊娠しやすくなる」とまでは言えませんが、「少しでもリラックスした気持ちで治療に臨める」ことが、間接的に良い影響をもたらしている可能性は十分にあると考えられます。

この研究の結論は、「音楽は不妊治療中の不安や痛みを和らげ、気持ちを前向きにしてくれる」ということ。科学的な根拠も「中等度の信頼性あり」と評価されています。治療そのものの成功率を大きく変えるかどうかは今後の研究を待つ必要がありますが、少なくとも心のケアとしては取り入れてみる価値がありそうです。

お気づきになられている方も多いと思いますが、新百合ヶ丘駅では構内で音楽が流れています。ちょっと耳を傾けてみたり、病院に通う道中でもお好きな曲を聴いてみると、治療中の時間が少し柔らかく、安心できるものに変わるかもしれません。

  • 音楽部演奏会イメージ
    音楽部による演奏会の様子
  • 当院では音楽で患者さんを癒す取り組みとして、年2回ほど音楽部院内コンサートも行っていますので、そちらの方も是非お気軽に足をお運びください(次回は2026/1/31(土)です)。