ドクターコラム

「何度移植してもなかなか妊娠しない…」そんな方への新しい選択肢〜GM-CSF入り培養液を用いた胚移植について〜|リプロダクションセンター

産婦人科 / リプロダクションセンター 部長 田島 博人

掲載日:2026-6-5

新しい選択肢「GM-CSF」とは?

体外受精で胚盤胞まで育った良好な胚を移植しても、残念ながら妊娠につながらないことがあります。「胚は良いと言われたのに、なぜ…」そう感じている患者さんは少なくないと思います。

近年、そうした“反復不成功”の方に対して、新しい方法として注目されているのが GM-CSFという成分を含んだ培養液を使う胚移植です。これは、もともと人の体の中に存在する物質(サイトカイン)の一つです。女性では、卵管や子宮内膜などから自然に分泌されており、胚が育つ環境づくりに関わっていると考えられています。「胚の発生する環境を整えるサポート役」のような存在と言えます。

これまでの研究では、GM-CSFを含む培養液を使用したことで、

  1. 着床率の上昇
  2. 妊娠率の改善
  3. 流産率の低下

などが報告されています(Fertil Steril. 2013 May;99(6):1600-9)。特に凍結胚を融解したあとにGM-CSF入り培養液で回復培養を行ってから移植する方法では、

  1. 着床率が約15%上昇
  2. 妊娠率・出産率が約10%上昇

したという報告もあります(J Assist Reprod Genet. 2022;39(6):1373–81)。
また現在、日本国内でもこの方法が本当に有効かを確かめる大規模な臨床試験が進められています。当院では、

  1. 良好な胚を2回以上移植しても結果が出ない
  2. 反復着床不全(RIF)が疑われる

といった方に対して、このGM-CSF培養液を用いた移植を選択肢の一つとして検討しています。

※GM-CSF培養液を用いた移植は自費診療になります。
※全ての方に効果があると言える段階でもないため、良くご相談をしてからの使用となります。

安全面については、現在までの報告では先天異常の増加、明らかな有害事象などは増えていません。ただし新しい治療法であるため、今後さらにデータの蓄積が必要です。

不妊治療は、結果が見えない時間との闘いでもあります。何度も移植を経験されて上手く行かなかった患者さんにとって、GM-CSFは新しい可能性を広げる選択肢の一つになるかもしれません。

【参考文献】
・Fertil Steril. 2013 May;99(6):1600-9
・J Assist Reprod Genet. 2022;39(6):1373–81

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