胚培養士コラム
「小さな命を守るために~培養室での取り組み~」|リプロダクションセンター胚培養士 神保 亜耶
掲載日:2025年8月26日
皆様の大切な卵子・精子・受精卵が培養室でどのように管理されているかご存知ですか?今回は、培養士が小さな命を守るために日々行っている取り組みをご紹介いたします。
取り違いを防ぐために
一つの作業ブースに一人の患者様と一人の培養士
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卵子や精子を扱うすべての工程において、一つの作業ブースで複数の患者様の検体を同時に扱うことは一切ありません。培養士は常に一人の患者様を専任で担当し、最後まで責任をもって作業にあたります。受精卵の培養においても、採卵後から凍結または胚移植まで一人一部屋の個室型培養器(インキュベーター)を使用しています。
ダブルチェックの徹底
一人の培養士が作業を行い、もう一人の培養士が指差し呼称により確認するダブルチェックをすべての工程に設けています。使用する容器すべてに氏名やID 番号等を記載し、さらにペンの色を分けるなど視覚的に区別しやすい工夫をしています。
また、記載にはダイヤモンドペンを使った刻印(インク不使用)も取り入れています(※油性ペンではインクに含まれる化学成分が培養に悪影響を及ぼす懸念があるため)。採卵や胚移植の際は、患者様自ら氏名と生年月日を声に出していただくことで、ご本人確認を徹底しています。
受精卵の発育を守るために
インキュベーター24時間モニター設備
受精卵が育つためにはインキュベーターが常に正常に稼働していることが重要です。インキュベーターには温度やガス濃度に異常が起きると培養士に連絡が届くシステムを設けていますが、さらにモニターを設置し、培養室に居なくとも稼働状況を24時間リアルタイムで確認できるシステムも導入しました。また、当院では病棟スタッフの24時間常駐に加え、培養士の夜勤体制も整えているため、有事の際にも即時対応が可能です。
インキュベーターとラボ環境の管理
インキュベーターの稼働状況は毎日実際に目視で点検をしています。さらに、内部のガス濃度を専用機器で定期的に測定することで、安定して正確な培養環境を維持しています。また、インキュベーター外(ラボ)の環境も受精卵にとっては重要です。クリーンルームであることはもちろんのこと、高温多湿な環境は機械の故障やカビの原因になり得るため、一年を通じて室温は約25℃、湿度は70%以下を徹底しています。空調が故障した場合に備えて予備の空調システムも導入しています。
凍結胚を守るために
凍結された胚は液体窒素で満たされた専用のタンクに保管しています。タンク内の液体窒素が枯渇しないよう点検と補充を毎日行っており、予備の液体窒素も常に確保しています。
熟練した技術で守る
一つひとつの作業に当院独自の技能試験を設けており、それをクリアした培養士のみが患者様を担当します。10年以上の経験を持つ培養士が複数在籍しており、安定して高い技術を維持しています。
最後に
私たち培養士は病院の休診日も休まず培養室に赴き、様々な細かい管理を徹底し、大切な命をお守りしています。このコラムが、治療を受けられる皆様に少しでも安心と信頼をお届けできるものとなれば幸いです。