看護師コラム
「不妊治療と男性の気持ち」|リプロダクションセンター不妊症看護認定看護師 米田 泉
掲載日:2025年3月10日
不妊治療を進める中で、「夫婦間の温度差」を感じる方も多いのではないでしょうか。特に、女性が妊活を始めたいと考えていても、夫の協力が得られないケースは少なくありません。では、なぜ男性は不妊治療に消極的なのでしょうか。その背景には、男性なりの理由や心理的な壁があるのです。
男性が不妊検査を避ける理由
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厚生労働省の調査によると、精液検査を受けた男性の約半数は、女性が検査を受けた後にようやく検査を受けています。また、精液検査を受けた39.1%の男性は、自ら結果を聞きに行かず、妻が一人で結果を聞いていることが分かっています。
男性が不妊検査に非協力的な理由として、次のようなことが挙げられます。
① 子供はいつか「自然に授かる」と考えている
「頑張らなくても、いつか授かるだろう」と楽観的に考えている男性は少なくありません。また、不妊についての知識が乏しく、「不妊は女性側の問題」と思い込んでいる場合もあります。
② 婦人科・レディースクリニックへの抵抗感
不妊治療を行う医療機関の多くは女性患者が中心で、男性にとっては入りづらい雰囲気があります。「婦人科に行くのは女性のためのもの」と考え、足が遠のいてしまうこともあるでしょう。
③ 自分に原因があることを知るのが怖い
男性は、自分の精子の状態や性機能に対して「男としての価値」を重ねる傾向があります。そのため、検査を受けて万が一異常が見つかった場合、「自分はダメな男なのではないか」と落ち込むのではないかという不安を抱えがちです。その恐れから、無意識に検査を避けることもあります。
このように、男性が不妊治療に消極的なのは「協力したくないから」ではなく、むしろプライドや不安、恐れといった複雑な感情が関係しているのです。
一方で、多くの男性は、妻を支えたいと考えています。不妊治療を進める中で、妻がつらい思いをしていることは理解しており、何かしら力になりたいと思っているのです。しかし、「どう支えればよいのか分からない」「自分に何ができるのか分からない」と悩むことも少なくありません。
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不妊治療を進める上で大切なのは、お互いの気持ちを尊重しながら、二人で前向きに取り組むことです。「子どもを授かること」だけが目的になってしまうと、夫婦関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。お互いを思いやり、協力しながら進めていくことが、より良い結果につながるはずです。
夫婦で一緒に考えることが大切
不妊治療は、決して女性だけの問題ではありません。男性にも検査や治療を受ける必要がある場合がありますし、治療中の妻を支えることも重要な役割です。
夫婦でしっかりと話し合い、不妊治療についての知識を共有することで、温度差を少なくすることができます。
もし、夫婦のコミュニケーションに悩んでいる場合や、不妊治療についての不安がある場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談することをおすすめします。当院では、不妊症看護認定看護師による相談外来を行っております。夫婦での向き合い方や、治療に対する不安などについてもご相談いただけますので、どうぞお気軽にお声がけください。
お二人が納得のいく形で治療に向き合えるよう、サポートさせていただきます。