ドクターコラム
「着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を受けられる方が増えております」|リプロダクションセンター掲載日:2025年3月25日
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を受けられる方が増えております
開院からリプロダクションを担当しております医師の田島です。培養士の秋元がPGT-Aについて分かりやすくコラムを書いてくれていますので、私からはその歴史と現状について少しお話したいと思います。
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日本初のPGTは2004年に承認実施されました。私が当時在籍していた研究室の仕事でしたので深く関わらせて頂きましたが、その対象は重篤な遺伝性疾患のみに限局するものでした(現在のPGT-M)。
染色体が正常な胚を移植することで不妊治療の成功率を高める試みとしてのPGT-Aは2015年から研究が進められ、診断技術の進歩と多くの知見の蓄積によって現在では当院を含め多くの施設で行われるようになりました。しかし患者さん当たりの生産率を高めるかについては未だ議論の途上にあります。
胚生検のダメージで胚を壊してしまう可能性、誤判定の可能性、正常と異常の細胞が混在しているモザイク胚の扱いなど色々な問題点があります。また費用は体外受精費用含め自費となり負担が重いものとなっています(2025年3月現在、当院での検査費用は2024年11月より減額され、1つの胚あたり税別7万円です)。
しかし近年のPGT-Aは診断精度が上がってきており、今後の発展に大きな期待を寄せております。リード数が飛躍的に向上したNGS(次世代シーケンシング)、SNP(一塩基多型)解析による倍数性判定、少量の検体からノイズ少なく全ゲノム増幅をするPTA(従来のPCRは孫copy→ひ孫copy →・・・となっていきますが、PTAはオリジナルが優先的に増幅される)など最近の技術革新は本当に目覚ましく、これらが妊娠成績向上に繋がって広く患者さんに恩恵をもたらしていくことを願ってやみません。