胚培養士コラム
「院内採精と自宅採精の違い~安心して採精に臨むためのポイント~」|リプロダクションセンター胚培養士 神保 亜耶
掲載日:2025年11月15日
今回は、採精についてよくご質問をいただく内容についてご紹介したいと思います。
院内採精と自宅採精のどちらがいいですか?
結論を言えば、「院内採精でも自宅採精でも大丈夫」です。
条件(運搬時間や温度管理)が守られていれば、院内採精でも自宅採精でも、培養成績・臨床成績に差はほぼありません。
運搬は2時間以内を目指そう!
採取した後は時間が経過するほど運動率が低下するとの報告もありますが、採取から処理まで2時間以内であれば精液所見や妊娠率に悪影響はないとの報告があります。
常温~体温域をキープ!
20~37℃が適温です。冷やしすぎたり温めすぎたりすると運動率や培養成績を下げてしまいます。夏場は長時間高温に曝されないように、冬場は冷えないように体温が伝わる持ち方をするのがお勧めです。お渡しした紙袋に入れて、直射日光(UV)を避けて運搬しましょう。
併せておススメしたいこと
禁欲期間は短い方がいい
禁欲期間が長い(7日以上)と、液量や精子濃度が増える傾向がある一方で、運動率や精子DNA損傷など機能面で悪影響が出る可能性があります。個人差が大きいですが、2日程度の禁欲期間で運動率とDNA損傷が改善したとの報告があります。
カップは水平を保って
採取した後はカップが横にならないようにご注意ください。蓋の裏に付いた精液からは、精子を十分に回収できない場合があります。また、気泡が出ないよう、大きな衝撃を与えずに運搬しましょう。
当院の採精室

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- 足を伸ばせる長いソファーとテレビを備えた個室で、ゆったりくつろげます。
- エアコンや照明はお好みで調整OK。
- DVDなど多数ご用意しております。持ち込みもOK。
- カップの提出は部屋の中からパスボックス内に置くだけでOK。スタッフと顔を合わせることなく退出できます。(入室前にカップと氏名を確認させていただきます)
さいごに
精子の質は受精だけでなくその後の胚発生においてもとても大切です。できるだけ良い状態で治療に使えるよう、一緒にがんばりましょう。
【参考文献】
Sacha C.R. et al. 2021. Reproductive Biology and Endocrinology,19(1),41.
世界保健機関(WHO)「ヒト精液検査および処理のためのWHO検査マニュアル(第6版)」
Lo Giudice A et al. 2024.Frontiers in Endocrinology,15.
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