胚培養士コラム
「不妊治療を支える「胚培養士」という仕事」胚培養士 神野 亜耶
掲載日:2026-3-16
不妊治療を支える胚培養士。その専門性や人材の背景、そして当院の体制について、今回はご紹介します。
医療系出身者だけではありません
日本には2,000人以上の胚培養士がいます。その約76%が4年制大学卒以上で、農学系(動物生命科学関連)出身者が最も多く約48%、次いで医療系学校出身者が約42%を占めています。
当院でも農学・動物系出身者が約70%、臨床検査技師出身者が約30%です。私自身も学生時代に動物発生学を学び、動物を用いた顕微授精の研究に取り組んできました。
働きながら資格を取得します
胚培養士には国家資格はなく、学会による認定資格制度があります。取得には1年以上の実務経験が必要で、全国の資格保有率は約70%です。
ただし実技試験はなく、資格のみで技術力を判断することはできません。そこで当院では独自の技術基準を設け、一定の水準を満たした培養士のみが受験できる体制を整えています。現在、当院の培養士の75%以上が資格を保有しています。
経験を重ねた人材は多くありません
すべての技術を習得するまでには、一般的に2~3年以上を要します。一方で、全国調査では新人の約4割が5年以内に離職するという報告もあります。資格は5年ごとの更新制で、更新率は6~7割とされています。また、経験7年以下の培養士が半数を占めるというデータもあり、長年経験を積んだ培養士は決して多くはありません。
当院の培養室長は約20年、私自身は10年以上の経験があります。若手の育成にも力を入れ、技術の継承と質の向上に努めています。
繊細な作業と管理が仕事

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胚培養士は、採卵された卵子の回収、精子の調整、顕微授精、胚の評価、凍結・融解、胚生検などを担っています。0.2mmにも満たない小さな命を扱う、極めて繊細な仕事です。また、培養環境や機器の精度など、目に見えない部分を徹底して管理することも重要な役割です。
私たちが大切にしていること
私たちが目指しているのは、元気で健康な赤ちゃんをご家族の腕に抱いていただくこと。妊娠率という数字だけでなく、その先の未来を見据えた医療を大切にしています。胚は小さな細胞の集まりですが、やがてご家族に笑顔をもたらす存在になる可能性を秘めています。その可能性を守ることが、私たちの役割です。
最後に
患者様が託してくださる大切な想いを、常に心に留めています。思うような結果に至らないこともありますが、見えない培養室の中で日々、小さな命と真摯に向き合っています。どうぞ安心してお任せください。
2025年8月掲載の「小さな命を守るために~培養室での取り組み~」も、ぜひあわせてご覧ください。
【参考資料】
日本卵子学会Vol.40 No.1 April 2023 & Vol.41 No.1 April 2024
- ・リプロコラム「より快適になったリプロダクションセンターをご紹介します」
- ・リプロコラム「小さな命を守るために~培養室での取り組み~」
- ・リプロダクションセンター不妊治療について
- ・リプロダクションセンター体外受精とは