胚培養士コラム
「GM-CSF含有培養液を導入しました ― 胚をより自然に近い環境で支える、新しい選択肢 ―」胚培養士 秋元 諭
掲載日:2026-6-3
当院ではこのたび、GM-CSF(Granulocyte-Macrophage Colony-Stimulating Factor)を含有した培養液を導入いたしました。
GM-CSFとは?
GM-CSFは、もともと人の体内に存在するサイトカイン(生理活性物質)の一種です。子宮内膜や卵管内にも存在しており、自然妊娠において受精卵はGM-CSFに触れながら発育していると考えられています。近年では、このGM-CSFを培養液へ添加することで、受精卵をより自然に近い環境で培養できる可能性があるとして研究が進められています。
一部の研究では、
- 妊娠継続率
- 出生率
- 流産率
などへの有用性が示唆されており、特に反復流産症例などで注目されています。一方で、現時点では「すべての患者様に明確な効果がある」とまでは言えず、現在も世界中で研究が続けられている分野でもあります。
当院ではどのような症例に使用するの?
全ての患者様に対し、本培養液を使用するわけではございません。当院では主に、
- 良好な胚を移植しているにもかかわらず妊娠に至らない方
- 流産を繰り返されている方
- PGT-AでA判定(正倍数性:euploid)と判定された胚を移植される方
などに対して、GM-CSF含有培養液の使用を検討しています。特にPGT-AにおいてA判定となった胚は、染色体数が正常である可能性が高い胚です。そのような胚で妊娠に至らない場合、胚そのもの以外の要素も考慮する必要があります。
当院では、融解後の回復培養から胚移植までをGM-CSF含有培養液で行うことで、胚をよcり自然に近い環境でサポートすることを目的としています。また、良好胚盤胞が得られにくい症例に対しても、症例ごとに選択肢の一つとして検討する場合があります。
当院が大切にしていること
不妊治療において、絶対的な「正解」はまだ存在しません。しかし世界中で日々研究が進み、培養環境も少しずつ進歩しています。私たち培養士が常に考えているのは、「どうすれば、受精卵により自然に近い環境を提供できるか」ということです。
培養室では、温度・酸素濃度・湿度・pHなどを徹底管理し、体内環境の再現を目指しています。GM-CSFもまた、その考え方の延長線上にある取り組みです。
最後に
GM-CSF含有培養液は、すべての患者様に必須となるものではありません。しかし、これまで結果に繋がらなかった症例に対し、新たな可能性となる場合があります。
当院では、科学的根拠を慎重に検討しながら、患者様にとって本当に有益と考えられる技術や培養環境を導入しています。使用の適応や費用につきましては、患者様ごとに異なりますので、詳しくは外来にて医師へご相談ください。
【参考文献】
・Ziebe S, et al. Fertility and Sterility. 2013.
・Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020.
- ・リプロコラム「より快適になったリプロダクションセンターをご紹介します」
- ・リプロコラム「小さな命を守るために~培養室での取り組み~」
- ・リプロダクションセンター不妊治療について
- ・リプロダクションセンター体外受精とは