妊娠する力「妊孕能」とは|不妊治療について

妊娠する力「妊孕能」とは

卵子の質の低下と対策

女性の妊孕能(にんようのう:妊娠できる能力)は20歳代前半がピークであり、20代後半から徐々に衰え始め、30代後半で急速に低下します。不妊症治療の成績を左右する最も重要な因子が年齢です。

女性は100~200万個の卵子を持って生まれてきますが、精子と異なり卵子は女性の生涯の間に決して新しく作られることはありません。加齢に伴い徐々に数が減っていき、初潮を迎える頃には30万個、妊娠できる時期には10~30万個、37~38歳で2万5千個以下になると卵胞数減少の加速期に入り、その後の十数年で1000個以下となり50歳前後で閉経を迎えます。

毎月1個ずつ卵胞は発育するのではありません。毎月1000個位が月経と関係なく育ちはじめ、3~4ヶ月位かかって成熟してきたもののうち、月経周期と一致する都合のよい大きさの卵胞が1個だけ選ばれて排卵し、残りはすべてしぼんでいきます。すなわち、卵子は毎日30~40個ずつなくなっていく計算になります。

加齢に伴い数が減っていくことに加え、卵子は排卵されるまでの非常に長い期間、卵巣内で様々なストレスにさらされ続けるため、以下のような問題が生じ、質の低下が起こってきます。

  1. 卵子の減数分裂がうまくいかなくなる(→ 染色体異常の卵子が増える)
  2. 卵子細胞質でのミトコンドリア機能低下(→ エネルギー産生が低下し発育不良に)
  3. 卵子細胞質でのカルシウム放出低下(→ 受精後の胚発生が悪くなる)
  4. 細胞の老化に関与する染色体末端のテロメアが短縮する(→ 細胞分裂が停止)

卵子は新しく作られることがないため、その質の改善を試みることは非常に難しいことです。しかし何とか少しでも卵子の質を良くしたいと思うのは、治療にあたる我々も当然考えることです。可能なことは、現在卵巣にある卵子の質をこれ以上下げないということと、減数分裂途中にある卵子が減数分裂を再開する時に、できるだけ条件を良くしてやることです。

ある程度効果が見込めることを以下にお示しいたしますが、その効果に関しては個人差が大きいといえます。

生活面

  1. 適度な運動(卵胞発育時期の体を温める程度の運動)
  2. 適度な入浴(適温で血行を良くする程度)
  3. ストレスを溜めない生活(精神的な安定、リラックスは非常に大切です)

内服薬

  1. 総合ビタミン(特にB、C、D、E)やコエンザイムQ10、カルニチン [薬局で購入]
  2. 微量元素・亜鉛・リン酸など [食物から:レバーや野菜など]
  3. 漢方薬(当帰芍薬散、桂枝伏苓丸、加味逍遥散、温経湯など)[個々にあったものを当院で処方します]
  4. レスベラトロール

体外受精の成功の鍵は、いかにして染色体異常がなく質の高い良好胚を得られるかにかかっています。少しでも質の良い卵子を得るために、よい結果が得られなかった時は同じ方法を繰り返すのではなく、排卵誘発法を変えたり、使用する薬剤の種類を変えたりして、より患者さん個々に合った方法を検討していきます。それらに加え、上記サプリメントを併用したり、体質改善を目標に運動や鍼灸をお勧めしていくこともあります。