不妊治療について

不妊治療について

主な原因と検査



1.排卵障害・卵成熟障害

不妊症の主な原因とその検査・治療について

基礎体温によって排卵に関する障害(無排卵・遅延排卵など)の有無がわかります。体重変動に伴う排卵障害が疑わしい場合には、その改善をして頂きます。また月経中に各種ホルモンの基礎分泌値を測定することで、下垂体ホルモン・副腎ホルモン・性腺ホルモンの異常の有無を確認します。
LH(黄体ホルモン)がFSH(卵胞ホルモン)より高い場合や、男性ホルモン高値などの場合には多嚢胞性卵巣(PCO)を疑います。FSH値は卵巣の予備能力を知ることにも役立ちます。また乳汁産生を促すホルモンであるプロラクチン(PRL)が高い場合はやはり排卵障害を引き起こします。このPRLは抗精神薬によって上昇することがありますので、初診の問診時には服用している薬剤があれば必ずお教え下さい。

薬剤による治療としては、卵子の成熟に効果があるとされる漢方薬を用いたり、排卵誘発薬を使用したりします。排卵誘発薬には多胎や卵巣過剰刺激症候群のリスクがありますので慎重な使用を心がけています。またPCOの場合は腹腔鏡下卵巣多孔術を行うことで約8割に自然排卵が戻るとされており、誘発に反応が悪い場合や結果が得られない場合にはお勧めしております。

2.卵管障害

月経終了直後の子宮内膜が薄い時期に子宮卵管造影検査(HSG)を行い、卵管通過性・卵管水腫・卵管癒着・子宮内腔異常などの確認を行います。この検査は子宮の入り口より細いチューブを挿入し、レントゲンの透視下に造影剤を注入しながら撮影を行っていくものです。造影剤の種類によっては、その散らばり具合を見るために翌日も撮影を行うことがあります。

不妊症の主な原因とその検査・治療について

卵管が詰まっていた場合には卵管鏡下卵管形成術(FT)(内視鏡下手術の項を参照下さい)を行ったり、卵管癒着や卵管采(卵管の先の卵子をピックアップする部分)閉塞の場合には腹腔鏡下卵管癒着剥離術・卵管采形成術などを行います。卵管癒着・閉塞を起こす感染症としてはクラミジアが有名で、HSGをする前に血液検査または頚管粘液を採取して感染の有無を確認しています。陽性の場合は抗生物質による治療をご夫婦共に行っています。卵管水腫が重症で不可逆的な場合には、その内容液が着床を妨げる原因となりますので腹腔鏡下に卵管切除を行った後に体外受精を行うこともあります。 また簡便な方法として卵管通気・通水を行うこともあります。


3.精子の障害

 不妊症の約半数に、程度の差はあれ男性因子が認められます。従って精液検査は非常に重要です。1~4日の禁欲期間の後に(長すぎても良くありません)外来でお渡しする滅菌容器に採取して出来るだけ早く持参して頂きます(ご主人が来院する必要は必ずしもありません)。月~土曜日の毎日、外来時間内であればいつでも検査を行うことができます。

 精液検査を行い、精液量・精子濃度・総精子数・運動率などを調べることで、無精子症・乏精子症・精子無力症などが診断されます。ただし、この検査によって異常が認められても、再検査で問題ないこともあるため短絡的な診断は出来ません。治療としては、人工授精(IUI/AIH)や体外受精/顕微授精を行うこととなります。


精 液 量 1.5ml以上
精子濃度 1mlに1,500万個以上
総精子数 3,900万個以上
精子運動率 動精子が40%以上、もしくは前進運動精子が32%以上
精子正常形態率 4%以上
精子生存率 58%以上
正常精液所見(WHO 2010)


4.子宮頚管障害

 排卵期には頚管粘液の分泌が多くサラサラになるため(排卵期におりものが増量する自覚がある方は、このピークが性交渉のタイミングとなります)、この時期にのみ精子は子宮内に進入することが出来ます。ところが頚管粘液分泌不全や抗精子抗体の存在などのために、その進入が障害されることがあります。排卵日付近にこの頚管粘液を採取して(卵胞発育を見る超音波検査と共に複数回検査をすることがあります)、それを乾燥させた結晶の状態を観察して判定をします。

 さらにフーナーテスト(PCT)といって排卵直前~排卵日にタイミングを合わせて検査日2日前~当日朝の間で性交渉をして頂き、外来にて頚管粘液中の運動精子を数えることで、問題なく子宮内まで精子が達しているかどうかを見ることが出来ます。

 PCTはタイミングが非常に重要ですので、その前に1~数回外来受診をして頂き排卵日を厳密に予測する必要があります。不良であった場合は再検査を行うこともありますが、精液検査所見と併せて検討の上、洗浄濃縮人工授精や体外受精に進むことがあります。またPCTは間接的な精液検査であるとも言えます。


5.着床障害

 子宮内腔を観察することで、着床に悪影響を与える子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、子宮奇形の存在を確認します。検査用の極めて細い子宮鏡(軟性鏡子宮鏡φ3~4mm)を子宮口から挿入し、生理食塩水を子宮内に潅流させながら丁寧に観察いたします。検査による疼痛が少ないため外来で施行可能であり、患者さんご自身にも画面を見ていただけます。

 さらにフーナーテスト(PCT)といって3~4日の禁欲の後、排卵直前~排卵日にタイミングを合わせて検査日前夜~当日朝の間で性交渉をして頂き、外来にて頚管粘液中の運動精子を数えることで、問題なく子宮内まで精子が達しているかどうかを見ることが出来ます。

 PCTはタイミングが非常に重要ですので、その前に1~数回外来受診をして頂き排卵日を厳密に予測する必要があります。不良であった場合は再検査を行うこともありますが、精液検査所見と併せて検討の上、洗浄濃縮人工授精や体外受精に進むことがあります。またPCTは間接的な精液検査であるとも言えます。


検査用子宮鏡

正常の子宮内腔

粘膜下子宮筋腫

多発した子宮内膜ポリープ

大きな粘膜下筋腫で圧排された内膜

 これらの疾患は不妊症の原因になったり、過多月経の原因になったりすることがあります。子宮鏡ではその病変を肉眼的に確認し、適切な治療方針を立てることが出来ます。例えば子宮筋腫では子宮内腔への突出度を見ることで子宮鏡下に摘出できるか、腹腔鏡下に摘出すべきか、摘出手術の際の摘出順序の検討などの判断に役立ちます。


6.器質的な障害

器質的な障害
 上図のような各種婦人科疾患は初診時の経膣超音波検査にてすぐに確認することが出来ます。このうち妊娠に悪影響を与えると考えられるものについては手術にて切除を行います。当院ではそれらを内視鏡下手術(腹腔鏡/子宮鏡)で行っております。詳細は後述の内視鏡下手術の項をご覧下さい。

7.その他の検査について

 今まで述べてきた検査の他にも色々な検査があり、必要に応じて適宜行ってまいります。高温期中期に十分なホルモンが分泌され、よい着床環境となっているかを見るための血中エストラジオール/プロゲステロン採血。他の血液検査として、末梢血検査・炎症反応(他の疾患の有無)、感染症(肝炎・梅毒・風疹など妊娠後も見据えて確認します)、甲状腺機能異常や高血糖の有無(妊娠に悪影響を与えます)などを見ます。また細菌感染は胚の発育・着床に悪影響を及ぼしますので、子宮頚管~腔内の細菌培養を月経中に行います。


不妊症一般検査リスト/施行時期

検査
時期
検査項目 検査内容
初診時 子宮頸部細胞診
(子宮頸がん検査)
基本的に全例に施行します
経膣超音波断層検査

●子宮筋腫・卵巣のう腫・子宮内膜症・子宮奇形など形態的な異常の有無を調べます

血液検査

●貧血の有無・肝機能・腎機能・感染症(B型肝炎・C型肝炎・梅毒)・内膜症マーカー(CA125)・クラミジア抗体・甲状腺機能・血糖・抗核抗体・プロラクチン(PRL)

いつ
でも
卵巣予備能力検査

●抗ミュラー管ホルモン(AMH):卵巣の機能がどれだけ保たれているかの目安となる検査です

血液検査

●血液型・HIV抗体・風疹抗体

精液検査

●男性因子の検査として、精液の量・精子濃度・運動率などをチェックします


月経中
血液検査(ホルモン基礎値)

●排卵周期に関わるホルモン値についてチェックを行います
(卵胞刺激ホルモン[FSH]・黄体化ホルモン[LH]・卵胞ホルモン[E2/エストラジオール])

子宮内腔培養

●子宮内腔に着床を妨げるような雑菌が繁殖していないかを月経中に検査いたします

経膣超音波断層検査

●遺残卵胞の有無・胞状卵胞の数(卵巣機能を反映します)を確認します


低温期
子宮卵管造影検査(HSG)

●造影剤を子宮口より細いカテーテルで注入し、子宮の形状・卵管の通過性をチェックします

子宮鏡検査(HFS)

● 粘膜下子宮筋腫・内膜ポリープなどの子宮内腔病変の有無を確認します
卵管の通過性の精密検査を行うこともできます(子宮鏡下選択的卵管通水検査)


排卵前
経膣超音波断層検査
(排卵予測検査)

● 超音波による卵胞計測・頸管粘液の性状を確認して排卵日を予測し、フーナーテストを予約します

頸管粘液検査

排卵日
フーナーテスト(性交後試験)

●検査前日の夜に性交渉をもった上で来院していただき、子宮頸管粘液中の運動精子を調べます


高温期
血液検査
(高温期ホルモン採血)

●高温期に分泌される卵巣ホルモン(エストラジオール/プロゲステロン)が十分であるか調べます



不妊症一般検査の施行時期